株式の譲渡所得とは、株式を売却したり譲渡したりすることで生じる利益に対して課税される所得のことを指します。この所得は、他の所得とは別に計算される申告分離課税の対象となり、税率が一律で設定されている点が特徴です。株式を保有する個人にとって、譲渡時の税務処理を正しく理解することは、資産管理の基本となります。本記事では、株式譲渡所得の基本的な仕組みから計算方法、課税の種類、確定申告の手順までを詳しく解説します。
株式譲渡所得の基本的な概要
株式譲渡所得は、株式の譲渡によって得られた利益を指します。具体的には、株式を売却した際に受け取る金額から、株式の取得にかかった費用や譲渡にかかる手数料などを差し引いた金額が譲渡所得となります。この所得に対しては、所得税と住民税が課されます。
譲渡所得が発生するのは、譲渡価額が取得費や譲渡費用を上回った場合です。損失が出た場合には課税されませんが、損失の繰越控除などの仕組みを利用して将来の課税を調整できる場合があります。上場株式と非上場株式(一般株式)で課税の扱いが一部異なりますが、税率自体は共通しています。
株式譲渡は、単なる売却だけでなく、M&Aなどの企業間取引でも頻繁に発生します。このような場面でも、譲渡所得の計算は基本的に同じルールに基づきます。個人株主が株式を譲渡する際は、税務の観点から事前の準備が重要です。
株式譲渡所得の計算方法
株式譲渡所得の計算は、以下の基本式で行います。
譲渡所得 = 譲渡価額 – (取得費 + 譲渡費用)
ここで、譲渡価額は株式を売却した際に受け取る金額を意味します。取得費は株式を購入した際の価格や取得にかかった諸費用です。譲渡費用には、仲介手数料や登録免許税などが含まれます。
取得費が不明な場合、特に相続などで取得した株式については、譲渡価額の5%を取得費として概算計算することが可能です。この方法により、正確な取得費を証明しなくても譲渡所得を算出できます。
上場株式等の場合
上場株式を証券取引所で売却する場合、譲渡価額は市場価格に基づきます。取得費は購入時の価格に加え、購入手数料を加算します。譲渡費用は売却時の手数料です。この計算で得られた譲渡所得に対して、申告分離課税が適用されます。
例えば、株式を1,000万円で取得し、1,500万円で売却した場合、取得費と譲渡費用を差し引いた差額が譲渡所得となります。こうした取引は日常的に行われており、計算を正確に行うことが税務申告の鍵です。
一般株式等(非上場株式)の場合
非上場株式の譲渡では、譲渡価額の算定が市場価格がないため複雑になることがあります。通常は当事者間の合意価格や評価額に基づきますが、税務上は適正な価額が求められます。計算式は上場株式と同様ですが、取得費の証明が重要です。
非上場株式の譲渡は、M&A取引でよく見られます。この場合、譲渡所得は譲渡価額から取得費と譲渡費用を控除した額となり、相続税の対応額を加算して所得を減額できる特例もあります。
株式譲渡所得にかかる税率
株式譲渡所得に対する税率は、上場株式等と一般株式等で共通しており、所得税15.315%(復興特別所得税を含む)と住民税5%の合計で20.315%です。この税率は申告分離課税として、他の所得とは独立して計算されます。
この一律税率は、株式譲渡の税務処理を簡素化する点で利便性が高いです。2025年以降は、年間所得が3.3億円を超える場合に追加の課税措置が適用される可能性がありますが、一般的な個人投資家には影響が少ない範囲です。
| 区分 | 税率(所得税) | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 上場株式等に係る譲渡所得等(譲渡益) | 15.315% | 5% | 20.315% |
| 一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益) | 15.315% | 5% | 20.315% |
この表のように、どちらの株式も同じ税率が適用されます。税額の計算は「譲渡所得 × 20.315%」で求められます。
申告分離課税の仕組み
申告分離課税とは、株式譲渡所得を給与所得や事業所得など他の所得から分離して税金を計算する方法です。これにより、累進課税の影響を受けず、一律の税率で処理されます。この仕組みは、株式取引の活性化を支える重要な制度です。
上場株式等と一般株式等は、それぞれの譲渡所得を区分して計算しますが、税率は同一です。確定申告時には、これらの所得を別々に記載し、税額を算出します。
確定申告の必要性と手順
株式譲渡所得が発生した場合、原則として確定申告が必要です。特に、年間の譲渡所得が一定額を超える場合や、損失を繰り越す場合には申告が求められます。申告期限は通常3月15日までです。
手順としては、まず譲渡所得を計算し、源泉徴収票や取引明細を確認します。次に、確定申告書に譲渡所得欄を記入し、税額を計算します。e-Taxを利用すれば、オンラインで効率的に申告可能です。
損失の繰越控除
譲渡損失が発生した場合、上場株式等の損失は3年間繰り越して将来の譲渡益と相殺できます。一般株式等でも同様のルールがあります。この仕組みを活用することで、税務上の負担を平準化できます。
相続株式の譲渡所得
相続により取得した株式を譲渡する場合、取得費に相続税額の一定割合を加算できます。計算式は「収入金額 – (取得費 + 譲渡資産に対応する相続税額 + 譲渡費用)」です。この特例により、譲渡所得が減額され、税負担が軽減されます。
相続株式の譲渡は、家族間の資産移転でよく発生します。正確な相続税額の按分計算がポイントです。
M&Aにおける株式譲渡所得
M&A取引では、株主が株式を譲渡し、譲渡所得が発生します。この場合も基本的な計算式は変わりませんが、譲渡価額の評価が重要です。個人株主にとっては、分離課税のメリットが活かせます。
取引の対価として金銭を受け取る際、税務申告を適切に行うことが求められます。事前の税務相談が役立つ場面です。
贈与や他の譲渡形態との違い
株式の贈与の場合、譲渡所得ではなく贈与税が課されます。時価と譲渡価額の差額が課税対象となる点が異なります。売却ではなく寄付する場合も、税務処理が変わります。
| 譲渡形態 | 課税種類 | 主な税率 |
|---|---|---|
| 売却(譲渡) | 譲渡所得税 | 20.315% |
| 贈与 | 贈与税 | 10〜55% |
これらの違いを理解することで、適切な譲渡方法を選択できます。
必要経費の詳細
譲渡所得計算で控除できる必要経費には、取得時の手数料、譲渡時の仲介手数料、登録費用などが含まれます。これらを正確に記録しておくことが、所得の最小化につながります。
特に、非上場株式では評価額算定のための費用も必要経費として認められる場合があります。領収書などの証憑を保管しましょう。
税務申告書の記入ポイント
確定申告書Bの「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」欄と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」欄に分けて記入します。証券会社からの譲渡損益計算書を活用すると便利です。
複数口座での取引がある場合、各口座の明細を合計して申告します。計算ミスを防ぐため、事前にシミュレーションをおすすめします。
特別控除や特例の活用
一定の条件を満たす場合、特定口座を利用すれば源泉徴収で税務処理が完了します。申告不要を選択できる点が便利です。ただし、損益通算を希望する場合は申告が必要です。
上場株式の特定口座では、譲渡益から自動的に税金が引かれますが、確定申告で還付を受けられる場合もあります。
非居住者の株式譲渡所得
非居住者が日本国内の株式を譲渡する場合も、譲渡所得に課税されます。税務条約の適用で二重課税を避けられることがあります。居住者移転前の株式譲渡も注意が必要です。
事業用株式の取り扱い
事業所得として株式を保有する場合、譲渡所得ではなく事業所得として課税されることがあります。区分の判断が重要です。
記録管理の重要性
株式取引の全履歴を管理することで、取得費の証明が容易になります。デジタルツールを活用した記録が現代的です。
税制改正の動向
株式譲渡所得の税率は長年安定していますが、復興特別所得税の終了や追加課税の導入に留意が必要です。最新の情報を確認しましょう。
まとめ
株式の譲渡所得は、資産運用における重要な税務要素であり、正しい理解がスムーズな申告を支えます。計算方法や税率を把握し、必要経費を適切に控除することで、税務処理を効率化できます。
株式譲渡所得の計算と確定申告ガイドをまとめました
譲渡所得の基本は「譲渡価額 – (取得費 + 譲渡費用)」であり、20.315%の申告分離課税が適用されます。上場株式と一般株式の違いを踏まえ、確定申告を丁寧に行うことが資産管理の基盤となります。














