この記事の要点
- 担保株式とは、信用取引の保証金や証券担保ローンの担保として差し入れる株式のこと
- 担保としての評価額は時価そのままではなく、掛け目(一般に80%前後)を掛けた金額になる
- 株価が下がると担保評価も下がり、追加保証金(追証)や追加担保が必要になる場合がある
- 株を売らずに資金を用意できる反面、金利負担と強制決済の可能性を理解しておくことが大切
- 使う前に「余裕資金の範囲か」「下落時の備えがあるか」を数字で確認しておきたい
長期で保有している株式を売らずに、投資の幅を広げたい。あるいは、急な資金需要に対応したい。そんなときに検討材料となるのが担保株式という考え方です。保有株は、ただ持っているだけでなく「担保」として活用できる資産でもあります。
ただし、担保として使う場面では、株価の変動がそのまま自分の資金繰りに影響します。仕組みを知らずに使うと、想定外のタイミングで追加の資金を求められることもあります。この記事では、担保株式の基本から、掛け目の計算、追証の仕組み、証券担保ローンとの違い、活用時のチェックポイントまでを順番に整理します。
担保株式とは?まず押さえたい基本の考え方
担保株式とは、金融取引を行う際に、証券会社や金融機関へ差し入れる担保として扱われる株式のことです。主な使い道は次の2つに分かれます。
- 信用取引の委託保証金の代わりに使う(代用有価証券として差し入れる)
- 証券担保ローンの担保にする(保有株を担保に資金を借りる)
ポイント:どちらも「株を売却せずに、その価値を信用力として使う」点は共通しています。一方で、目的・コスト・リスクの出方は大きく異なります。
代用有価証券という呼び方
信用取引では、取引の担保として委託保証金を差し入れます。この保証金は現金だけでなく、一定の条件を満たす有価証券でも代用できます。このとき保証金の代わりに使う株式や投資信託などを代用有価証券と呼びます。担保株式という言葉は、この代用有価証券としての株式を指して使われることが多いです。
担保に使える株式・使えない株式
すべての株式が担保として認められるわけではありません。一般的には、東京証券取引所などに上場している銘柄が対象で、次のような場合は対象外になったり、評価が下がったりすることがあります。
- 上場廃止が決まった銘柄や、その可能性がある銘柄
- 監理銘柄・整理銘柄に指定された銘柄
- 証券会社が独自に担保として認めていない銘柄
- 値動きが極端に大きい銘柄(掛け目が低く設定される)
担保に使いたい銘柄が決まっている場合は、利用予定の証券会社や金融機関の担保対象銘柄と掛け目を、事前に確認しておくと安心です。
掛け目とは?担保評価額の計算方法
担保株式を理解するうえで最も重要な言葉が掛け目(かけめ)です。掛け目とは、担保として認められる評価額の割合のことです。株価は日々変動するため、時価の全額を担保とはせず、一定の割合を掛けて安全側に評価します。
計算式:担保評価額 = 株式の時価 × 掛け目
信用取引の代用有価証券では、多くの証券会社が原則80%程度の掛け目を適用しています。たとえば時価300万円の株式を差し入れた場合、担保評価額は240万円です。掛け目は市場環境や銘柄の状況に応じて見直されることがあり、引き下げられると、同じ株数でも担保評価額が減る点には注意が必要です。
用途別の掛け目の目安
| 利用場面 | 掛け目・上限の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 信用取引の代用有価証券 | 時価の80%前後 | 保証金として建玉の担保になる |
| 証券担保ローン(プライム市場上場株) | 時価の65%以内が一例 | 現金を借り入れて使途は比較的自由 |
| 証券担保ローン(スタンダード市場上場株) | 時価の60%以内が一例 | 市場区分により掛け目が低くなる |
| 証券担保ローン(グロース市場上場株) | 時価の50%以内が一例 | 値動きの大きさを反映して低め |
注意点:上の数字は一例です。掛け目や融資上限は、証券会社・金融機関・商品ごとに異なり、市場環境によって変更されることもあります。利用前に必ず最新の条件を確認してください。
信用取引で担保株式を使う仕組み
信用取引は、手持ちの資金を担保にして、それより大きな金額で株式を売買できる取引です。担保として差し入れる委託保証金は、原則として約定代金の30%以上、かつ最低30万円以上が必要とされています。
この保証金を現金で用意する代わりに、保有している株式を差し入れることができます。現金を新たに入金しなくても、すでに持っている株式が「保証金の代わり」として働く点が、担保株式の大きな魅力です。
建てられる金額の計算例
時価300万円の株式を担保にした場合を考えます。
- 担保評価額:300万円 × 80% = 240万円
- 必要保証金率:30%
- 建てられる金額の上限:240万円 ÷ 30% = 約800万円
ポイント:手持ちの株式300万円を売らずに、最大で約800万円分の取引枠が生まれる計算です。ただし、枠いっぱいまで使うと、値動きへの余裕がほとんどなくなります。
保有株を売らずに済むメリット
- 長期保有している株式の配当や株主優待の権利を維持しやすい
- 売却によって発生する利益への課税を、すぐには受けずに済む
- 現金を追加で用意せず、投資機会に素早く対応できる
ただし、担保にした株式の価格が下がれば、保証金としての価値も減ります。この点が、次に説明する追証につながります。
追証(追加保証金)の仕組みを理解する
追証は、追加保証金の略称です。信用取引では、評価損の拡大や担保株式の値下がりによって、委託保証金維持率が一定の水準を下回ると、追加の保証金を求められます。多くの証券会社では、維持率が20%を下回った場合に追証が発生する仕組みです。
担保株式の値下がりで追証になる例
先ほどの例を使って確認します。担保評価額240万円で、約800万円分を買い建てた状態から、株価が全体で10%下落したとします。
- 担保株式の時価:300万円 → 270万円、担保評価額は270万円 × 80% = 216万円
- 買い建てた銘柄の評価損:800万円 × 10% = 80万円
- 実質的な保証金:216万円 − 80万円 = 136万円
- 維持率の目安:136万円 ÷ 800万円 = 17%
意外な盲点:下落率が10%でも、担保株式と建玉の両方が同時に値下がりするため、維持率は30%から17%まで一気に下がります。担保にする株式と、取引する銘柄の値動きが連動しやすいときは、特に注意が必要です。
追証が発生したときの対応
追証が発生すると、所定の期限までに次のいずれかの対応が求められます。
- 現金や有価証券を追加で差し入れる
- 建玉の一部または全部を決済して、必要保証金を減らす
期限内に解消できない場合は、証券会社が建玉を強制的に決済することがあります。期限のルールは証券会社ごとに異なるため、口座を開設する際に確認しておきましょう。
追証を避けるための基本の備え
- 建玉は保証金の上限いっぱいまで使わない(半分程度に抑えると余裕が生まれる)
- 追加で差し入れられる現金を、あらかじめ別に確保しておく
- 担保にする株式と、取引する銘柄の値動きが偏らないようにする
- 決算発表や重要な経済指標の前後は、建玉を減らして臨む
補足:取引所は、急騰・急落した特定銘柄に対して、委託保証金率を引き上げる規制を実施することがあります。規制が入ると必要な保証金が増えるため、保有中の銘柄に規制情報が出ていないか、日ごろから確認しておくと安心です。
証券担保ローンで担保株式を活用する方法
担保株式のもう一つの活用法が証券担保ローンです。保有している株式・債券・投資信託などを担保に差し入れ、時価評価額の一定割合まで資金を借りられます。株を売却せずに現金を用意できることが最大の特徴です。
ローンの金利と限度額の目安
証券担保ローンの金利は、他のローン商品と比べて低めに設定される傾向があり、年1〜4%程度が一つの目安とされています。ただし、金融機関によって基準金利には幅があり、年2%台から、年5%程度のものまで見られます。借入限度額も数十万円から数億円までと商品によって様々です。
チェック:基準金利は市場金利の動きに応じて見直されます。契約後に金利が上がる可能性もあるため、変動する前提で返済計画を立てておきましょう。
利息負担のイメージ
時価1,000万円のプライム市場上場株式を担保にした場合を例にします。
- 借入可能額の上限:1,000万円 × 65% = 650万円
- 実際に借りる額:300万円(上限の半分以下に抑える)
- 金利が年3%の場合の年間利息:300万円 × 3% = 9万円(月あたり約7,500円)
借りた資金で得られる収益が、この利息を上回る見込みがあるかを、事前に確認することが大切です。
信用取引の保証金と証券担保ローンの違い
| 比較項目 | 信用取引の代用有価証券 | 証券担保ローン |
|---|---|---|
| 主な目的 | 株式売買の取引枠を広げる | 現金を借りて幅広い用途に使う |
| 担保の評価 | 時価の80%前後が目安 | 時価の50〜65%程度が一例 |
| コストの中心 | 買い方金利・貸株料・手数料など | 借入金利 |
| 担保不足時の対応 | 追証(追加保証金) | 追加担保または一部返済 |
| 向いている人 | 取引経験があり、値動き管理ができる人 | まとまった資金需要に計画的に対応したい人 |
担保株式を活用するときの銘柄選びと管理のコツ
担保株式は「どの株を担保に出すか」で安全度が大きく変わります。次のポイントを意識すると、リスクを抑えやすくなります。
値動きの穏やかな銘柄を担保にする
一般に、時価総額が大きく、業績や配当が安定している銘柄は、値動きが比較的穏やかです。担保としても評価が安定しやすく、掛け目も高めに設定される傾向があります。反対に、株価の変動が大きい新興市場の銘柄は、掛け目が低く、下落時の影響も大きくなります。
担保銘柄を分散させる
特定の1銘柄だけを担保にすると、その銘柄が急落したときに担保評価が一気に減ってしまいます。複数の業種・銘柄に分散させておくと、一つの銘柄の下落による影響を和らげられます。投資信託など、株式以外の資産を担保に使えるかどうかも、確認しておくとよいでしょう。
ポイント:担保にした株式でも、配当金を受け取れるケースが一般的です。ただし、株主優待や議決権の扱いは、担保の種類や契約内容によって異なる場合があります。事前に確認しておきましょう。
定期的に担保評価と維持率を点検する
- 週に一度は、担保評価額と委託保証金維持率を確認する
- 市場が大きく動いた日は、その日のうちに数値を見直す
- 維持率が30%を下回ってきたら、建玉を減らす基準をあらかじめ決めておく
- ローンの場合は、借入残高が担保評価額の何割かを常に把握する
使いやすい目安:取引枠やローンの借入は、上限の半分程度にとどめる運用が、多くの解説で推奨されています。余力を残すことで、相場が急変しても慌てずに対応しやすくなります。
税金・手続きで知っておきたいこと
担保に入れただけでは課税されない
株式を担保として差し入れても、その時点では売却したことにはならないため、譲渡益への課税は発生しません。担保にしたまま保有を続けられるのは、担保株式の利点の一つです。
強制決済になると課税対象になる
一方で、追証や担保不足を解消できず、担保株式が強制的に売却された場合は、通常の売却と同様に譲渡損益が計算されます。意図しないタイミングで利益が確定し、課税されることもあります。
ローンの利息の扱い
証券担保ローンの利息は、借りた資金の使い道によって、税務上の扱いが変わる可能性があります。投資目的で借りる場合でも、利息が必ずしも経費として認められるとは限りません。詳しくは税務署や税理士などの専門家に確認してください。
補足:NISA口座で保有している株式は、信用取引の担保や証券担保ローンの担保として使えないのが一般的です。担保に使う株式は、特定口座や一般口座で保有しているものが対象になる点も押さえておきましょう。
担保株式を使う前のチェックリスト
実際に活用する前に、次の項目を一つずつ確認しておくと、想定外の事態を避けやすくなります。
- 目的は明確か:取引枠を広げたいのか、現金が必要なのかを整理する
- 掛け目と上限を確認したか:利用予定の会社の最新の条件を見る
- 10〜20%下落しても耐えられるか:担保評価額と維持率を試算しておく
- 追加で入れられる資金があるか:追証や追加担保に備えた現金を確保しておく
- 金利や手数料を把握したか:年間のコストを金額で計算しておく
- 期限のルールを理解したか:追証や追加担保の対応期限を確認しておく
- 生活資金と切り分けているか:余裕資金の範囲で運用する
意外な盲点:相場が急落する局面では、複数の銘柄が同時に下がり、担保評価が思った以上に減ることがあります。平時の数字だけでなく、急落時の数字も一度試算しておくことが、資金管理の基本です。
まとめ
担保株式は、保有している株式を売らずに、信用取引の保証金や証券担保ローンの担保として活用できる仕組みです。掛け目を掛けた評価額の範囲で、取引枠や借入枠を確保でき、長期保有の株式を活かしながら資金の使い道を広げられます。
その一方で、株価が下がれば担保評価も同時に減り、追証や追加担保が必要になる場面もあります。基本は「余裕をもった枠の使い方」「下落時の試算」「追加資金の確保」の3点です。仕組みを理解したうえで、無理のない範囲で取り入れていきましょう。
担保株式の基礎知識|掛け目・追証・証券担保ローンの仕組みを整理
担保株式とは、信用取引の代用有価証券や証券担保ローンの担保として差し入れる株式のことです。担保評価額は時価に掛け目(信用取引では80%前後、ローンでは50〜65%程度が一例)を掛けて計算します。担保株式の値下がりで維持率が下がると追証が発生するため、上限いっぱいまで使わず、上限の半分程度に抑えるのが安全です。使う前に、目的・掛け目・下落時の試算・追加資金・コスト・期限のルールを確認し、余裕資金の範囲で活用しましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、金融アドバイスではありません。個別のケースについては専門家にご相談ください。

















