※本記事は一般的な情報提供を目的としており、金融アドバイスや税務アドバイスではありません。個別のケースについては税理士などの専門家にご相談ください。
この記事のポイント
- 中心的な同族株主とは、ある株主とその近い親族の議決権が合計で25%以上になる場合のその株主を指す
- 非上場株式(取引相場のない株式)の株価評価方式を決める重要な判定要素になる
- 「同族株主」「中心的な株主」とは判定基準も役割も異なり、混同しやすい
- 判定の親族範囲は配偶者・直系血族・兄弟姉妹・1親等の姻族と、その関係法人
- 相続や事業承継、未上場企業への出資を考えるうえで押さえておきたい基礎知識
中心的な同族株主とは何か
株式投資というと上場株を思い浮かべる方が多いですが、世の中の会社の大半は証券取引所に上場していない非上場会社です。オーナー経営の中小企業に出資したり、家業の株式を相続・贈与で受け取ったりするとき、その株式にいくらの価値があるのかを評価する必要が出てきます。このときに登場するのが「中心的な同族株主」という考え方です。
中心的な同族株主とは、同族株主のいる会社において、ある同族株主の1人と、その配偶者・直系血族・兄弟姉妹・1親等の姻族(およびこれらの人が支配する関係法人)が持つ議決権を合計したとき、その合計が会社全体の議決権総数の25%以上になる場合における、その中心となる株主のことをいいます。
ざっくり言えば、「自分とごく近い親族のまとまりで、会社の4分の1以上を握っているか」を見るのが中心的な同族株主の判定です。会社への影響力が実質的に大きい一族のコアメンバーかどうかを切り分ける物差し、とイメージすると分かりやすくなります。
なぜ株式の評価で重要になるのか
非上場株式は市場価格が存在しないため、相続税・贈与税の計算では国の財産評価のルールに沿って価値を算定します。その評価方法は大きく分けて二つあり、どちらが適用されるかで税負担が大きく変わることがあります。
| 評価方式 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 原則的評価方式 | 会社を支配する立場の株主 | 類似業種比準方式や純資産価額方式で評価。一般に金額が高めになりやすい |
| 特例的評価方式(配当還元方式) | 影響力の小さい少数株主 | 受け取る配当をもとに評価。一般に金額が低めになりやすい |
会社を支配する一族の中心メンバーであれば、その株式は会社の価値そのものを反映した原則的評価方式で評価されます。一方、同じ一族でも会社への影響が小さいと判断される株主であれば、より穏やかな配当還元方式が使えることがあります。この「影響が小さい株主かどうか」を線引きする際に、中心的な同族株主の存在が決め手になるのです。
具体的には、取得後の議決権割合が5%未満で、自身が中心的な同族株主に当たらず、会社の役員でもない株主が取得した株式は、配当還元方式で評価できるとされています。つまり「中心的な同族株主が別にいること」が、少数株主が有利な評価を受けるための前提条件になっているわけです。
「同族株主」との違いを整理する
よく混同されるのが「同族株主」と「中心的な同族株主」です。判定の順番としては、まず会社に同族株主がいるかどうかを見て、そのうえで個々の株主が中心的な同族株主に当たるかを見ていきます。範囲が広いものから狭いものへと絞り込んでいくイメージです。
| 用語 | 判定の基準 | 対象とする親族の範囲 |
|---|---|---|
| 同族株主 | 株主とその同族関係者の議決権合計が50%超(該当グループがなければ30%以上) | 親族など同族関係者全般(範囲は広い) |
| 中心的な同族株主 | 本人と近い親族の議決権合計が25%以上 | 配偶者・直系血族・兄弟姉妹・1親等の姻族(範囲は狭い) |
| 中心的な株主 | 同族株主がいない会社で、単独で10%以上の議決権を持つ株主 | 本人単独で判定 |
ポイントは、同族株主は「グループ全体」で見るのに対し、中心的な同族株主は「特定の本人を起点にした狭い親族のまとまり」で見るということです。同じ会社の中でも、ある人は中心的な同族株主に当たり、別の人は当たらない、ということが起こります。
判定に含まれる親族の範囲
中心的な同族株主の25%判定に含まれるのは、本人を起点とした次の人たちです。一般的な「親族」よりもかなり絞り込まれている点が特徴です。
- 配偶者(夫・妻)
- 直系血族(親・祖父母・曽祖父母など上の世代、子・孫・ひ孫など下の世代)
- 兄弟姉妹
- 1親等の姻族(配偶者の父母、子の配偶者など)
- 上記の人たちが議決権の25%以上を支配している関係法人
注目したいのは直系血族には世代の上限・下限がないこと。祖父母より上の世代も、孫より下の世代も含まれます。一方で、おじ・おば、いとこ、甥・姪などは中心的な同族株主の判定には含まれません。これらの親族は同族株主の判定では関係者に含まれることがあるため、範囲の違いに注意が必要です。
25%基準の判定の進め方
判定はあくまで株主一人ひとりを起点に行います。たとえば長男を中心に据えた場合、長男本人+配偶者+親+子+兄弟姉妹などの議決権を足し上げ、その合計が会社全体の25%以上になれば、長男は中心的な同族株主と判定されます。
| 起点となる株主 | 合計対象 | 判定 |
|---|---|---|
| 本人20%+配偶者10% | 合計30% | 25%以上 → 該当する |
| 本人10%+兄弟5% | 合計15% | 25%未満 → 該当しない |
同じ会社でも誰を起点に数えるかで結果が変わるのがこの判定の面白いところです。一族全体では会社を支配していても、特定の個人を起点にすると25%に届かないケースもあり、その株主は中心的な同族株主には当たらない、という判断になります。
評価方式が決まるまでの流れ
同族株主のいる会社で、ある株主が取得した株式の評価方式は、おおむね次の順番で絞り込まれます。
- その株主は同族株主か。同族株主でなければ配当還元方式
- 取得後の議決権割合が5%以上か。5%以上なら原則的評価方式
- 5%未満でも、その人が中心的な同族株主に当たるか。当たれば原則的評価方式
- 中心的な同族株主に当たらなくても、会社の役員(またはこれからなる人)か。役員なら原則的評価方式
- いずれにも当たらなければ、特例的な配当還元方式
この流れの中で、中心的な同族株主は「少数株主が配当還元方式を使えるかどうかの関所」として機能します。5%未満の同族株主であっても、本人が中心的な同族株主だったり役員だったりすると、影響力が小さいとは見なされず、原則的評価方式に戻されるわけです。
資産形成・事業承継の視点で押さえたいこと
未上場企業への出資や、家業の株式を引き継ぐ場面では、この判定が将来の税負担や資産価値の見え方に直結します。投資・資産運用の観点から、次のような点を意識しておくと役立ちます。
意識しておきたい3つの視点
- 議決権割合の設計:誰がどれだけ株式を持つかで評価方式が変わるため、株式の分け方は早めに考えておく価値がある
- 役員かどうか:割合が小さくても役員であれば原則的評価方式となる点は見落とされやすい
- 親族構成の把握:直系血族・兄弟姉妹・1親等姻族の保有状況を一覧にしておくと判定がスムーズになる
非上場株式は流動性が低く、評価額も外からは見えにくい資産です。だからこそ、どの評価方式が適用されるのかをあらかじめ整理しておくことが、相続や承継のときに慌てないための備えになります。
知っておきたい注意点
中心的な同族株主の判定は、株式数ではなく議決権の数で見るのが基本です。議決権のない株式(無議決権株式)などを発行している会社では、保有株数の感覚と判定結果がずれることがあります。また、25%や5%といった基準はわずかな差で結論が変わるため、ボーダーライン付近のケースほど慎重な確認が欠かせません。
こうした評価は専門的な判断を伴うため、実際の相続や贈与、出資を検討する際は、最新の取り扱いを税理士などの専門家に確認することをおすすめします。本記事はあくまで全体像をつかむための入り口として活用してください。
まとめ
中心的な同族株主は、非上場株式の評価方式を決めるうえで欠かせない判定基準です。本人と配偶者・直系血族・兄弟姉妹・1親等の姻族の議決権が合計で25%以上かどうかを、株主ごとに見ていくのが基本でした。同族株主や中心的な株主とは判定の物差しが異なる点を押さえておくと、混乱せずに整理できます。
中心的な同族株主とは?範囲と判定をやさしく整理|株式評価の基礎
会社を実質的に動かす一族のコアメンバーかどうかを切り分けるのが、中心的な同族株主の考え方です。この判定の有無で、株式が原則的評価方式になるか、より穏やかな配当還元方式になるかが変わり、相続や事業承継、未上場企業への出資の場面で資産価値の見え方に影響します。議決権割合の設計や役員かどうか、親族の保有状況を早めに整理し、いざというときに備えておくことが、資産を守るうえでの確かな一歩になります。













