はじめに
アース製薬は、虫ケア用品や口腔衛生用品、入浴剤など、日本の家庭に広く浸透した製品を展開する大手消費者向け医薬品メーカーです。1925年の設立以来、100年以上にわたって日本の生活文化を支えてきた企業として知られています。本記事では、株式投資家の視点からアース製薬の経営状況、成長戦略、そして投資判断に必要な情報を詳しく解説します。
アース製薬の事業概要と市場ポジション
アース製薬の主力事業は、虫ケア用品の製造販売です。「アースジェット」「ゴキジェットプロ」「ごきぶりホイホイ」といった製品は、多くの日本の家庭で使用されており、業界内での認知度と信頼度は極めて高いものとなっています。また、加熱蒸散殺虫剤の「アースレッド」や液体電子蚊取り「アースノーマット」など、他社に先駆けた独創的な製品開発を継続しており、市場でのリーダーシップを維持しています。
虫ケア用品に加えて、アース製薬は入浴剤部門でも国内トップシェアを課得しています。「バスロマン」「温泡」といった自社製品に加え、グループ企業である「バスクリン」や「白元アース」の製品を合わせると、入浴剤市場における圧倒的な地位を確立しています。さらに、オーラルケア、消臭芳香剤、衛生用品、園芸用品など、多角的な事業展開により、安定した収益基盤を構築しています。
2025年12月期の連結売上高は1,791億8,200万円で、前期比5.9%の増収を達成しました。営業利益は80億8,700万円(前期比25.9%増)、経常利益は88億9,300万円(前期比20.8%増)と、増収増益の好調な業績を記録しています。特に注目すべきは、親会社株主に帰属する当期純利益が52億3,800万円と、前期比50.7%の大幅な増加を達成した点です。
2026年12月期の業績予想と成長見通し
アース製薬は、2026年12月期の連結業績予想として、売上高1,880億円(前期比4.9%増)を見込んでいます。営業利益は90億円(前期比11.3%増)、経常利益は95億5,000万円(前期比7.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は62億円(前期比18.4%増)と、引き続き増収増益の見通しを示しています。
この好調な業績見通しの背景には、複数の成長要因があります。まず、虫ケア用品や口腔衛生用品の好調が挙げられます。これらの製品カテゴリーは、消費者の衛生意識の高まりに支えられており、継続的な需要が期待されています。次に、総合環境衛生事業の成長が寄与しています。この事業領域は、企業や施設における衛生管理の重要性が増す中で、新たな成長機会を提供しています。
さらに、アース製薬は価格改定やSKU削減を通じた「稼ぐ力」の強化に注力しています。これは、単なる販売量の増加ではなく、製品ポートフォリオの最適化と利益率の向上を目指す戦略です。同時に、海外展開の拡大も重要な成長ドライバーとなっており、国内市場の飽和に対応する重要な施策となっています。
中期経営計画「Act For SMILE COMPASS 2026」の戦略
アース製薬は、2026年12月期を最終年度とする3ヵ年の新中期経営計画「Act For SMILE COMPASS 2026」を策定しています。この計画は、企業価値の向上に向けた包括的な戦略を示しており、投資家にとって重要な指針となります。
中期経営計画では、3つの重点方針が定められています。第一に、構造改革資金として50~60億円を配分し、事業の効率化と競争力強化を推進します。第二に、設備・ITデジタル投資として150億円(年間50億円)を投資し、製造能力の向上とデジタル化による業務効率化を実現します。第三に、人財投資資金として10億円を確保し、人材育成と組織強化に注力します。
さらに注目すべきは、M&A待機資金として100億円を確保している点です。これは、戦略的な買収や事業統合の機会に備えた資金であり、アース製薬が積極的な成長戦略を展開する姿勢を示しています。実際に、2026年1月には株式会社バスクリンとの経営統合を完了しており、グループの統合による相乗効果が期待されています。
海外展開と国際化戦略
アース製薬の成長戦略において、海外展開の拡大は極めて重要な位置付けとなっています。2024年実績では、海外売上高が217億円(連結売上高の12.9%)に達しており、前年の175億円(11.1%)から42億円の増加、シェアで1.8ポイントの上昇を記録しています。
この海外展開の加速は、複数の要因に支えられています。第一に、アース製薬の主力製品である虫ケア用品は、アジア太平洋地域を中心に高い需要があります。気候条件や生活習慣の違いにより、これらの地域では虫害対策が重要な課題であり、アース製薬の製品は現地のニーズに適合しています。第二に、グローバルな衛生意識の高まりにより、消費者向け衛生用品全般の需要が増加しています。
2026年12月期の経営計画では、海外展開の拡大がさらに加速することが見込まれています。これにより、国内市場の成熟化に対応しながら、企業全体の成長率を維持・向上させる戦略が展開されます。
配当政策と株主還元戦略
アース製薬の配当政策は、投資家にとって重要な関心事です。2025年12月期の1株当たり配当金は、普通配当120円に特別配当5円を加えた125円となり、前期比で5円の増加を達成しました。2026年12月期の配当予想は130円(前期比5円増)となっており、継続的な配当増加の姿勢が示されています。
中期経営計画では、DOE(配当性向)4%を目安に安定配当を実施する方針が明記されています。これは、企業の利益成長に応じた配当の増加を約束するものであり、株主にとって安心感をもたらします。また、自己株買いは機動的に検討するとされており、市場環境に応じた柔軟な株主還元策が展開される可能性があります。
このような配当政策は、アース製薬が安定した利益を生み出す企業であることを示すとともに、株主価値の向上に対するコミットメントを表現しています。配当利回りを重視する投資家にとって、アース製薬は魅力的な投資対象となり得ます。
営業利益率の改善と収益性向上
アース製薬の経営戦略において、収益性の改善は重要なテーマとなっています。2024年実績では営業利益率が3.8%となっており、2023年の4.0%から0.2ポイント低下しています。しかし、2026年12月期の計画では、価格改定やSKU削減、海外展開拡大による「稼ぐ力」の活用を通じて、収益性の向上を目指しています。
営業利益率の改善は、単なる売上増加ではなく、利益率の向上を目指すものです。これは、製品ポートフォリオの最適化、製造効率の向上、そして高付加価値製品への注力を意味しています。特に、虫ケア用品や口腔衛生用品といった高利益率製品の販売拡大が、全体的な収益性向上に貢献することが期待されています。
製品イノベーションと新製品開発
アース製薬は、継続的な製品イノベーションを通じて、市場での競争力を維持しています。2026年1月には、ダニ対策の最高峰製品として「ゼロノナイト ダニ用 スプレー」を新発売し、「1年に1度」の新習慣と「アース史上最長効果」を実現しました。これは、消費者のニーズの変化に対応した製品開発の好例です。
同時に、コバエ対策においても「駆除」から「予防」へのシフトを推進し、「マモルーム コバエ用 2ヵ月セット」を新発売しています。このような製品開発の方向性は、消費者の衛生意識の高まりと、予防的なアプローチへの需要増加を反映しています。
さらに、アース製薬は独自技術「MA-T®技術」を活用した新たなビジネス展開を進めています。2026年2月には、この技術を活用したトップアスリートの感染対策に関する実証プロジェクトを開始し、「皮膚感染」と「臭気悩み」に対する新たなソリューションを提供しています。このような技術開発は、既存事業の枠を超えた新たな市場機会を創出する可能性を示唆しています。
経営統合による相乗効果
2026年1月に完了したバスクリンとの経営統合は、アース製薬の成長戦略における重要なマイルストーンです。バスクリンは、入浴剤市場における有力企業であり、この統合により、アース製薬の入浴剤事業はさらに強化されることが期待されています。
経営統合による相乗効果としては、以下の点が考えられます。第一に、製品ポートフォリオの拡充により、消費者に対してより多くの選択肢を提供できます。第二に、流通チャネルの統合により、販売効率が向上します。第三に、研究開発リソースの共有により、新製品開発の効率が高まります。第四に、管理部門の統合により、コスト削減が実現されます。
これらの相乗効果は、中期経営計画の達成を支援し、企業価値の向上に貢献することが期待されています。
投資判断のポイント
アース製薬への投資を検討する際には、以下のポイントに注目することが重要です。
第一に、安定した利益成長の見通しです。2025年12月期の好調な業績と2026年12月期の増収増益予想は、企業の基礎的な競争力を示しています。虫ケア用品や口腔衛生用品といった主力製品の需要は、消費者の衛生意識の高まりに支えられており、継続的な成長が期待できます。
第二に、配当利回りと株主還元の充実です。DOE4%を目安とした安定配当政策は、投資家に対する安心感をもたらします。特に、配当利回りを重視する投資家にとって、アース製薬は魅力的な投資対象となり得ます。
第三に、海外展開による成長機会です。海外売上高の増加傾向は、国内市場の飽和に対応する重要な成長戦略を示しています。アジア太平洋地域を中心とした海外展開の加速により、企業全体の成長率が向上することが期待されています。
第四に、経営統合による相乗効果です。バスクリンとの統合により、入浴剤事業の強化と全体的なシナジー効果が期待されています。これは、中期経営計画の達成を支援する重要な要素となります。
第五に、製品イノベーションと技術開発です。MA-T®技術などの独自技術の活用により、新たなビジネス機会が創出される可能性があります。これは、既存事業の枠を超えた成長を実現する可能性を示唆しています。
リスク要因の検討
投資判断を行う際には、潜在的なリスク要因についても検討することが重要です。
第一に、国内市場の飽和です。虫ケア用品や入浴剤といった主力製品は、国内市場で高いシェアを占めており、今後の国内での成長率は限定的である可能性があります。このため、海外展開の成功が企業全体の成長を左右する重要な要素となります。
第二に、原材料価格の変動です。化学製品メーカーであるアース製薬は、原材料価格の変動の影響を受けやすい業種です。今後の原材料価格の上昇は、利益率に悪影響を与える可能性があります。
第三に、競争環境の激化です。虫ケア用品や衛生用品市場には、複数の競合企業が存在しており、競争が激化する可能性があります。特に、海外企業の参入により、競争環境が変わる可能性があります。
第四に、規制環境の変化です。医薬品や医薬部外品は、厳格な規制の対象となっており、規制環境の変化は企業の事業に影響を与える可能性があります。
まとめ
アース製薬は、虫ケア用品や入浴剤などの主力製品を通じて、日本の消費者生活に深く根ざした企業です。2025年12月期の好調な業績と2026年12月期の増収増益予想は、企業の基礎的な競争力を示しています。安定した配当政策、海外展開の拡大、経営統合による相乗効果、そして継続的な製品イノベーションにより、アース製薬は今後も成長を続けることが期待されています。配当利回りを重視する投資家や、安定した利益成長を求める投資家にとって、アース製薬は検討する価値のある投資対象となり得ます。
アース製薬の株価動向と今後の成長戦略を徹底解説をまとめました
本記事では、アース製薬の経営状況、成長戦略、配当政策、そして投資判断に必要な情報を詳しく解説しました。アース製薬は、100年以上の歴史を持つ大手消費者向け医薬品メーカーであり、虫ケア用品や入浴剤などの主力製品を通じて、日本の家庭に広く浸透しています。2025年12月期の好調な業績と2026年12月期の増収増益予想は、企業の基礎的な競争力を示しており、今後の成長が期待されています。海外展開の拡大、経営統合による相乗効果、そして継続的な製品イノベーションにより、アース製薬は中期経営計画「Act For SMILE COMPASS 2026」の達成を目指しています。安定した配当政策と株主還元の充実により、投資家にとって魅力的な投資対象となり得るでしょう。














