※本記事は一般的な情報提供を目的としており、金融アドバイスではありません。個別のケースについては専門家にご相談ください。
- オーデリック株は現在、証券取引所で売買できません。かつての証券コードは6889でした
- 2020年にMBO(経営陣が参加する買収)を実施し、同年6月に上場廃止となりました
- 株式公開買付け(TOB)の価格は1株6,150円に設定されていました
- 非上場化の狙いは、市場の評価に左右されない中長期目線の経営への転換でした
- 近年は同様の「上場廃止=非公開化」が増えており、投資家として知っておく価値があります
「オーデリック株を買いたい」「証券コードや株価を知りたい」と検索する方が増えています。照明器具で広く知られるオーデリックは、住宅から店舗・施設まで幅広い灯りを手がける国内有数のメーカーです。しかし結論から言うと、オーデリックの株式は現在、一般の証券口座から買うことができません。理由は、数年前に上場を取りやめ、株式を限られた株主に集約する「非公開化」を選んだためです。
この記事では、なぜオーデリック株が市場から姿を消したのか、その背景にあるMBOという仕組み、そして似たケースに出会ったとき投資家がどう向き合えばよいかを、資産運用の視点から整理します。一つの企業の事例を通じて、上場・非上場という株式投資の根っこにあるテーマを学べる内容です。
オーデリックとはどんな会社か
オーデリックは、東京都杉並区に本社を置く照明器具の専業メーカーです。前身はオーヤマ照明株式会社で、1996年に現在の社名へと改めました。住宅向けのシーリングライトやシャンデリアから、店舗・オフィス・公共施設に使われる大型の照明設備まで、灯りに関わる製品を幅広く展開しています。近年はLED化やデザイン性の高い製品、調光・調色といった付加価値の領域にも力を入れてきました。
照明という生活に密着した分野で長年の実績を持ち、住宅市場と業務用市場の両輪で事業を展開。製品ブランドとしての知名度は高く、家づくりやリフォームの場面で名前を目にした方も多いはずです。
事業の規模感を示すと、グループ全体での売上高は数百億円規模に達します。直近では2025年3月期に売上高が約429億円、営業利益が約53億円とされ、営業利益率はおよそ12%という水準で推移しています。照明という成熟した市場の中で、利益をしっかり確保できている企業だと評価されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業内容 | 住宅用・施設用などの照明器具の製造・販売 |
| 本社所在地 | 東京都杉並区 |
| かつての証券コード | 6889 |
| 現在の上場状況 | 非上場(市場での売買は不可) |
オーデリック株は今、買えるのか
あらためて確認すると、オーデリックの株式を証券会社の口座から売買することはできません。かつては新興市場に株式を公開しており、証券コード6889で取引されていましたが、2020年6月に上場廃止となりました。そのため、株価チャートや株主優待、配当利回りといった上場企業ならではの情報を、現在リアルタイムで追うことはできない状態です。
ネット上には上場していた当時の株価や指標が残っていることがあります。これらは過去の記録であり、今から買える価格や条件ではありません。古い情報を最新と取り違えないよう気をつけたいところです。
「人気企業なのに、なぜ株を手放す機会がないのか」と不思議に感じるかもしれません。その答えが、次に説明するMBOによる非公開化です。これは経営の意思で上場をやめ、株式を一部の関係者に集約する動きで、近年の日本市場で目立つようになっています。
2020年のMBO・非公開化の経緯
オーデリックは2020年2月、MBOによって株式を非公開化すると発表しました。具体的には、当時の社長が代表を務める受け皿会社(資産管理会社)が、株式公開買付け、いわゆるTOBを実施するという内容です。買付けの価格は1株あたり6,150円に設定され、買付け期間を経てTOBが成立。所定の手続きを踏み、同年6月に上場廃止へと至りました。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2020年2月 | MBOによる非公開化を発表、TOBの実施を公表 |
| 2020年2〜3月 | 1株6,150円でのTOB(株式公開買付け)を実施 |
| 2020年6月 | TOB成立を経て上場廃止、株主を少数に集約 |
国内の照明市場が成熟し、成長のペースが緩やかになるなかで、四半期ごとの市場評価にとらわれず、中長期の目線で経営判断を下せる体制を整えることが狙いとされました。海外展開を含めた将来への投資を、腰を据えて進めたいという意図です。
その後、オーデリックは持株会社体制へと移行し、グループの司令塔となる会社のもとで事業を続けています。上場をやめたからといって事業が縮小したわけではなく、むしろ自社の判断で機動的に動ける体制づくりを進めている、と位置づけられます。
そもそもMBOとは何か
ここで、投資の基礎知識としてMBO(マネジメント・バイアウト)を整理しておきましょう。MBOとは、その会社の経営陣が中心となって自社の株式を買い取り、経営権を握る手法を指します。多くの場合、経営陣は金融機関などから資金を調達し、その資金で市場に出回っている株式を買い集めます。
株式を買い集める際に使われる代表的な手段がTOB(株式公開買付け)です。TOBでは「この価格で、これだけの株数を買い取ります」と広く告知し、市場の外で株式を買い付けます。多くの株主から株式が集まり、流通する株式が一定以下になると、その会社は上場を維持する要件を満たせなくなり、上場廃止へと進みます。
- 経営陣が受け皿会社を設け、買収資金を準備する
- TOBで既存株主から株式を買い付ける
- 株式を少数に集約し、上場廃止・非公開化する
- 市場の評価に縛られず、中長期の経営に専念する
MBOには、意思決定のスピードが上がる短期的な株価の動きに振り回されにくくなるといった利点があるとされます。一方で、買収のための借入が経営の負担になり得る点や、買い手と売り手の立場が近くなることで買付け価格の妥当性が論点になりやすい点など、知っておくべきことも存在します。投資家としては、こうした両面を理解しておくことが大切です。
上場廃止になると株主の持ち株はどうなる
「保有している会社が上場廃止になったら、株はどうなるのか」は、多くの個人投資家が気にするテーマです。MBOやTOBによる非公開化の場合、一般的にはTOBに応じて株式を売却するか、最終的に株式併合などの手続きを通じて現金を受け取る形になります。つまり、紙くずになるわけではなく、あらかじめ提示された価格に応じた対価が支払われるのが通常です。
| パターン | 株主にとっての結果 |
|---|---|
| TOBに応じる | 提示価格で株式を売却し、現金を受け取る |
| 応じずに保有を続ける | 後の手続きで、最終的に対価が支払われることが多い |
| 上場廃止後 | 市場での自由な売買はできなくなる |
TOB価格は、発表前の株価に一定の上乗せ(プレミアム)が付くのが一般的です。そのため発表直後は株価がTOB価格付近まで上がりやすい一方、すでにその水準で買っても大きな値上がり益は見込みにくくなります。発表のタイミングや価格の妥当性を冷静に見極める姿勢が求められます。
増えている「上場廃止=非公開化」の流れ
オーデリックのケースは特殊な例ではありません。近年、日本の株式市場ではMBOやTOBによる非公開化が増加傾向にあります。背景には、上場を維持するためのコストや情報開示の負担、物言う株主への対応、そして「上場のメリットより、自由な経営のメリットを取りたい」という企業側の判断があると言われています。
投資家にとって、これは二つの意味を持ちます。ひとつは、保有銘柄が突然TOBの対象になり、思わぬ利益(あるいは強制的な売却)につながる可能性。もうひとつは、良い会社ほど市場から退場してしまい、買える対象が減っていくという側面です。応援したい企業に投資し続けたい人にとっては、悩ましい流れとも言えます。
非公開化が増える局面では、「割安で放置されている優良企業」がTOBの標的になりやすいとも指摘されます。財務が健全で、株価が実力に対して控えめな企業に注目する視点は、こうした流れの中でひとつのヒントになり得ます。ただし思惑だけで動くのは禁物で、あくまで企業の中身を見ることが土台です。
非上場の企業に投資する手立てはあるのか
「オーデリックのような非上場企業には、もう一切投資できないのか」という疑問もあるでしょう。原則として、非上場株は証券取引所で自由に売買できません。ただし近年は、プロ投資家向けに非上場株の情報提供のルールが整えられるなど、非上場株式へのアクセスを広げる動きも出てきています。
とはいえ、非上場株への投資は流動性の低さ(売りたいときに売れない)や情報の少なさといったハードルがあり、一般の個人にとって身近な選択肢とは言い切れません。多くの方にとって現実的なのは、上場している照明・電機関連の企業や、関連する分野に幅広く投資できる投資信託・ETFを通じて、近いテーマに触れる方法でしょう。
- 上場している電機・住宅設備関連の銘柄を調べてみる
- 関連業界をまとめて持てる投資信託やETFを活用する
- TOB・MBOの動きを市場全体のトレンドとして観察する
照明業界とオーデリックの現在地
照明業界は、白熱灯・蛍光灯からLEDへの置き換えが一巡し、市場全体としては落ち着いた成熟期に入っています。その中で各社が競い合っているのが、調光・調色やスマート照明、デザイン性、省エネ性能といった付加価値の領域です。単に「明るくする」ことから、「空間の質を高める」方向へと価値の軸が移ってきました。
オーデリックは非公開化によって、市場の短期的な評価から距離を置き、こうした中長期の製品開発や海外も視野に入れた展開に腰を据えて取り組める体制を整えました。上場をやめたことは後退ではなく、むしろ次の成長に向けた経営判断だと前向きに受け止めることもできます。直近の業績で安定した利益率を保っている点も、その地力を示していると評価できます。
LED化の一巡 → 付加価値競争へ。スマート化・デザイン・省エネが鍵となり、ブランド力と技術の蓄積を持つメーカーが強みを発揮しやすい局面と考えられます。
この事例から投資家が学べること
オーデリックの一件は、単なる一企業のニュースにとどまらず、株式投資の基本構造を学べる教材でもあります。上場と非上場の違い、MBOやTOBの仕組み、上場廃止が株主に与える影響——これらは、どんな銘柄に投資する場合でも知っておいて損のない知識です。
- その会社は今も上場しているか(売買できる状態か)
- 見ている株価や指標は最新の情報か
- TOBやMBOの発表が出ていないか
- 業界全体が成長期か、それとも成熟・再編の局面か
- 財務の健全性と利益を生む力があるか
こうした視点を持っておけば、「人気の名前だから」と飛びつく前に、その株が本当に今買えるのか・買う価値があるのかを落ち着いて判断できます。オーデリックのケースは、その確認の大切さを教えてくれる好例と言えるでしょう。
まとめ
オーデリックは照明分野で確かな存在感を持つメーカーですが、2020年のMBOによって上場を取りやめ、現在は株式を市場で売買できない非上場企業となっています。TOB価格は1株6,150円で、市場の短期的な評価に縛られない中長期経営への転換が、その狙いでした。投資家としては、保有銘柄がTOBの対象になる可能性や、優良企業が市場から退場していく流れを、ひとつの知識として押さえておきたいところです。
オーデリック株は買える?上場廃止とMBOの経緯まとめ
オーデリック株は今は買えない——これが出発点です。その理由を「MBOによる非公開化」という仕組みから理解すれば、上場と非上場の違い、TOBが株主に与える影響、そして近年の非公開化の流れまで、株式投資の大切な基礎が一本の線でつながります。気になる企業に出会ったら、まず「今、本当に買える状態か」を確かめる——オーデリックの事例は、その習慣の価値を静かに教えてくれます。














