この記事のポイント
- 日銀は長年の金融政策の一環として、上場投資信託(ETF)などを通じて日本株を大量に保有してきた
- 2026年に入り、保有ETFの段階的な売却が実際に始まっている
- 売却ペースは年間でみるとごく小さく、完了までには非常に長い時間がかかる見通し
- 発表直後は株価が一時下落したものの、その後は落ち着きを取り戻している
- 個人投資家にとっては、短期的な値動きよりも中長期の需給構造の変化として捉えることが大切
日銀が保有する株式・ETFとはどのようなものか
株式投資や資産運用に関心がある人であれば、「日銀が日本株を持っている」という話を耳にしたことがあるかもしれません。これは、日本銀行が金融緩和政策の一環として、個別の企業の株式を直接買うのではなく、東証に上場しているETF(上場投資信託)を通じて、間接的に幅広い日本企業の株式に投資してきたことを指します。
ポイント:日銀は個別企業を選んで株を買っているわけではなく、指数に連動するETFを通じて市場全体に資金を投じてきました。そのため、特定の企業だけが極端に影響を受ける構図ではありません。
この買い入れは、景気を支え、企業や市場の資金調達環境を安定させる目的で続けられてきましたが、新規の買い入れ自体は2024年3月に終了しています。つまり、現在議論されているのは「これから買うかどうか」ではなく、「これまでに積み上がった保有分をどう取り扱うか」というテーマです。
あわせて、日銀は過去の金融危機時に金融機関から買い取った個別株式も保有していましたが、こちらはすでに2025年7月までに売却が完了したと報告されています。現在、市場関係者の注目はもっぱらETFとJ-REIT(不動産投資信託)の取り扱いに移っています。
保有残高はどのくらいあるのか
では、実際にどれほどの規模の資産が積み上がっているのでしょうか。集計の仕方によって数字の見え方が異なるため、整理して確認してみましょう。
| 指標 | 金額の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 時価総額 | 約86.0兆円 | 市場価格ベースでの評価額 |
| 含み益 | 約48.8兆円 | 取得時からの評価益の規模感 |
| 簿価残高 | 約37.07兆円 | 帳簿上の取得価格ベース(2026年5月末時点) |
注意点:「時価」と「簿価」では数字の規模がかなり異なります。ニュースなどで「○○兆円」という数字を見たときは、どちらの基準で語られているのかを確認すると理解がスムーズになります。
いずれの基準で見ても、日銀が日本の株式市場においてきわめて大きな存在であることは間違いありません。これほどの規模の資産をどのように取り扱っていくのかは、株式投資をしている人にとっても無関係ではないテーマといえます。
売却方針の中身を確認する
2025年9月、日銀はこれまで保有してきたETFとJ-REITについて、段階的に売却していく方針を決定したと伝えられています。その後、実際の売却は2026年1月19日から開始されたとされ、2026年5月末の時点では既に売却が進み始めていることが確認されています。
売却ペースの目安
- ETF:年間簿価で約3,300億円程度(時価換算では約6,200億円程度)
- J-REIT:年間簿価で約50億円程度
- 市場全体の売買代金に対する比率は0.05%程度に抑える設計
これらの数字からも分かるとおり、一度に大量の株式を市場に流すのではなく、ごく少しずつ時間をかけて進めていくという考え方が基本になっています。株式市場への急激な影響を避けながら、長期的に保有を整理していく狙いがうかがえます。
売却ペースはどれくらい緩やかなのか
先ほどの年間売却額と、現在の保有残高を比べてみると、そのペース感がより具体的に見えてきます。複数の調査機関の分析では、この速度で進めた場合、売却が完了するまでに100年以上かかるとの見方が示されています。
読者へのヒント:「売却開始」というニュースの見出しだけを見ると急激な変化を想像しがちですが、実際の制度設計は非常に緩やかです。短期の値動きに過度に反応しない姿勢が大切です。
あわせて、日銀全体のバランスシートも量的引き締め(QT)の進行にともなって縮小が続いており、2026年5月末時点では前年同時期と比べて約97兆円縮小したとの分析もあります。株式ETFの売却は、こうした全体的な金融政策の正常化プロセスの一部として位置づけられていると理解すると、全体像がつかみやすくなります。
市場はどのように反応したか
売却方針が公表された直後には、日経平均株価が一時800円を超える下落を見せた場面があったと報じられています。大規模な「売り手」が市場に新たに現れるという受け止めから、短期的に警戒感が広がったことがうかがえます。
その後の展開:売却規模が市場全体からすれば小さく、ペースも緩やかであることが徐々に理解されるにつれて、株価は持ち直しに転じたと伝えられています。
この一連の流れは、新しい政策や制度変更の発表直後には、実際の影響度合いよりも「見出しの印象」で相場が動きやすいという、株式市場ではよく見られる現象の一例ともいえます。落ち着いて実際の数字を確認する姿勢が、こうした場面で役に立ちます。
個人投資家が意識したいポイント
ここまでの内容を踏まえ、株式投資や資産運用を行う個人がチェックしておきたい視点を3つに整理します。
視点1:規模の割に市場への直接的な圧迫感は限定的
年間の売却額は保有残高全体からすればわずかであり、特定の銘柄や業種に極端な影響を及ぼす設計にはなっていません。
視点2:長期の需給構造の変化として捉える
長い目で見れば、これまで「買い手」として存在してきた日銀が、ゆっくりと「売り手」側に転じていく構図です。超長期の資産運用計画を考える際の背景情報として知っておくと役立ちます。
視点3:ニュースの数字は「時価」か「簿価」かを確認する
報道によって基準が異なるため、同じ出来事でも金額の印象が大きく変わります。数字を比較する際は基準をそろえて見る習慣をつけると、思い込みによる誤解を避けられます。
まとめ
日銀が保有してきたETFをはじめとする日本株関連資産は、時価で約86兆円、含み益は約48.8兆円にのぼるとされ、日本の株式市場において非常に大きな存在感を持っています。2026年1月から始まった売却は、年間でみると簿価で約3,300億円程度というごく緩やかなペースで進められており、完了までには100年以上を要するとの見方が示されています。発表直後には株価が一時的に下落する場面もありましたが、その後は規模の小さなペースであることへの理解が広がり、落ち着きを取り戻しています。株式投資や資産運用に取り組むうえでは、こうした大きな政策の転換点を、短期的な値動きの材料としてだけでなく、長期的な市場構造の変化として捉えておくことが役立ちます。
日銀保有ETF86兆円、売却方針と株価への影響を整理をまとめました
日銀が保有するETFの残高は時価で約86兆円、簿価で約37兆円規模にのぼり、含み益は約48.8兆円とされています。2026年1月19日から始まった売却は年間簿価で約3,300億円というごく小さなペースで進められ、完了には100年以上かかる見通しです。発表直後に株価が一時下落した場面もありましたが、規模の小ささが理解されるにつれて落ち着きを取り戻しました。短期の値動きに一喜一憂せず、長期的な需給構造の変化として受け止める視点が、今後の資産運用を考えるうえで参考になります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、金融アドバイスではありません。個別のケースについては専門家にご相談ください。

















